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ここは美しい大地と山々に囲まれた、平和な国。
そこに今まさに新たな命が誕生しようとしていた…。
「まだか?まだ産まれぬのか?」
そわそわと王の間を落ち着きなく動き回るこの男こそ国王…アルデインその人だった…。
「王様❗落ち着きなさいませ❗」
執事達も諫めつつ落ち着きがなかった…。
仕様のないことだった…何せ二人の間には子が何年と出来なかったのだから……。
「おぎゃぁ❗❗」
遠くから微かに産声が聞こえた気がした…。慌てて王の間に駆け込んで来たのは妃付けの女官だった…
「王よ❗元気な……女の子でございます❗」
「そ…そうか❗❗産まれたか❗妃の元へ参るぞ❗❗」
駆け足で王は妃の元へ急いだ…何よりも我が子…それを待ち望んだのはアルデインに他ならなかった……。
「妃よ❗❗よくやった❗この様に愛らしい娘を見たことがないぞ❗」
王は涙を溜めながら妃を抱きしめた。
「はい…髪もあなたと同じブロンズにございます…」
妃は名をイリアと言った…。聡明で美しく、似合いの二人だった……。
「髪色なぞ関係ないわ❗イリアと私の子だぞ?可愛いに決まっておる」
産まれた子はブロンズの髪をしていた…王と同じ髪色だった…。
「マリアニールはどうだろう?優しく強い子になるように…」
王は娘をマリアニールと名付けた。イリアも『可愛い名ですね』と安堵をした…。少女はすくすくと成長した。
二人に愛されながら優しく、美しく、聡明に育った。12歳になる頃には求婚者が後を絶たなかった…。王と妃は自慢の娘だった…。
「お父様?いかがいたしましたか?」
マリアニールがふと寂しげに湖を眺める父に声をかけた。
「マリアか…隣国で内乱が始まったらしい…切ないものだな…」
隣の国はアルデインの国の3倍も大きい国だった。
「お父様❗この国は神様に守られておりますわ…大丈夫でございます❗」
マリアニールは強く言った。
「隣の国で碧き髪の娘が発見されたそうだ…やはり碧き髪の娘は災いを運んでくるのだな……」
碧き髪の伝説…マリアニールも良く知っていた…伝承に出てくる災いを呼ぶ者。しかしマリアニールは、信じなかった。
「碧き髪の娘は何をしたでしょうか?私にはわかりません。」
マリアニールはその娘の為に祈った。
「優しい我が子よ…お前が愛しいぞ」
しかし…平和は長続きしなかった…マリアニール15歳の年事件は起きた。
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