ホワイトデー

5/10
前へ
/106ページ
次へ
浜名にとって、この日1日の時間はいつもより格段に早く感じられる。 退屈な授業も、昼休みと放課後のケーキを思えばにやけずにはいられなかったほどだ。 そして、今日の浜名の食欲(スイーツ限定で)は、テレビ番組に出る有名人のそれに勝るとも劣らないものだった。 昼休み。 「……信じらんない!!」 共通項の多い河田をも唸らせるそれは、 「5号のケーキ、半分も食べるなんて!」 「しかも、朝にマカロン5個は食べたよね」 皆の記憶にしっかりと刻まれ、 「だって! 私は今日の為に生きてきたんだから!!」 そう言って、留まるところを知らなかった。 ────放課後。 帰宅部の浜名は、 「あ、職員室で貰って帰んなきゃ」 しっかり、というよりはちゃっかりキチンと今朝の先生の言葉を憶えていた。 が、それも終には、 「優月、まだ食べるの!?」 鬼気迫る河田に、 「……ぅ………明日にしときます」 こう言わされてしまう。 「糖尿病になるまえに、ほどほどを知りなよ? 来年のためにも、さ」 宥めるような諭し方に、浜名はコクンと頷いた。
/106ページ

最初のコメントを投稿しよう!

13人が本棚に入れています
本棚に追加