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とぼとぼと、浜名は1人で職員室に向かう。
いつも一緒に下校する河田は、今日は図書室に行くからと、教室で別れた。
「無駄にがっつくなよ?」
…浜名にちゃんと釘を刺して。
が、どんより気分も職員室の前で払拭した。
“来年の今日にまたケーキを貰うため”に、今年の今日を良い形で終わらせたくて。
「失礼しまーす!」
元気に言って、愛想も振り撒いて、目的物を手に、そそくさと職員室を後にした。
「大漁大漁♪」
持参したトートバッグを両手に持ち、浜名は昇降口に向かって歩を進めている。
落ち込んでいた気分も、ピアニシモのケーキを前に吹き飛んだらしい。
「我慢するけどね! 明日の朝ごはんにするもん」
昇降口で靴を履き替え、校門に向かって歩き出す。
そこまでの道程は、ちょうど運動部のランニングコースと交わる。
浜名の視界にも、部活指定ジャージを着た生徒が駆け抜けていく。
3月中旬ということもあって、Tシャツ姿の人も見受けられる。
「まぁ…ご苦労なことで」
浜名は、ぼんやりと呟く。
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