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一方通行のランニングコースの横断に、右を見て、左を見ずに歩を進める。
少し先に人が見えたが、スピードを保ってもらえれば大丈夫だ、と。
「浜名っ!!」
何処からか、自分の名を呼ぶ声を聞いた。
だが、それは知らない…“ような”声。
「んー……聞いたことある、気が…」
歩きながら首を傾げる。
「浜名!」
ぐっと距離感が縮まった。
というより、すぐ後ろに───
後ろを振り向くと、うっすら白い息を吐きながら、さっき一瞬目に留めた白いジャージの男子生徒がいた。
彼女を見て、速度を上げてきたようだ。
そんな彼を見て───
「……えっと…どちらさん?」
浜名の表情は、困惑そのもの。
記憶の片隅にも、彼のデータは無かった。
「マジかよ……」
ガックリ、と音が聞こえそうなほど、相手の男子は肩を落とした。
そんな痛わしい彼の落ち込みに、自然と浜名の胸には罪悪感が込み上げる。
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