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「すみません。マジで知らないです」
謝罪の言葉は、彼を更に凹ませる。
「やっぱりな……ハハハ」
ボソリと呟いた彼の言葉は、彼女には届かなかった。
狼狽え始める浜名を前に、彼は意を決したように顔を上げ、まっすぐに浜名を見た。
「手、貸して」
唐突な彼の言葉に、浜名は眉をハの字に。
「今いっぱいいっぱいなんだけど」
「あ……本当に」
浜名の両手に持たれたトートバッグを見て、彼は納得した。
困った顔をした彼を前に、彼女は「ちょっと待って」と右手のバッグを置いた。
「はい。…手相でも見てくれるの?」
笑いながら訊ねると、彼はすぐに視線を反らし、ジャージのポケットを探った。
「これ」
そうして、浜名の手のひらに苺のイラストが散りばめられた“いちごミルク”の飴を1つ載せた。
「え……あ…ありがとう?」
混乱している浜名に、
「俺も一応“バレンタイン”貰ったから」
彼が言った。
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