13人が本棚に入れています
本棚に追加
・・・・・
「………私? あげたっけ?」
右手で頭を軽く掻きながら、浜名は何とか思いだそうとした。
が、自己利益を最優先事項とする自分に、
“残念ながら見返りを期待できそうもない人にもあげよう”
なんて考えられなかったようで。
「ごめん、人違いじゃない?」
終いには、貰った飴を突き返す始末。
それには、相手に確信をもって話しかけた彼には、ほとほと予想外の反応だった。
彼にとって、ホワイトデーには飴1つでさえお返ししたことなど無かったのだ。
だが、ここで簡単に「はいそうですか」と言うわけにはいかなかった。
「───あっ、俺まだノルマ走ってねぇ!!」
「へ………?」
「じゃあなっ!!」
「ちょ……ちょー!?」
結局、浜名は飴1つと一緒に置き去りにされてしまった。
「…は、速い……」
あっという間に、彼の姿は見えなくなった。
───すぐに角だったから、でもあるが。
最初のコメントを投稿しよう!