ホワイトデー

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・・・・・ 「………私? あげたっけ?」 右手で頭を軽く掻きながら、浜名は何とか思いだそうとした。 が、自己利益を最優先事項とする自分に、 “残念ながら見返りを期待できそうもない人にもあげよう” なんて考えられなかったようで。 「ごめん、人違いじゃない?」 終いには、貰った飴を突き返す始末。 それには、相手に確信をもって話しかけた彼には、ほとほと予想外の反応だった。 彼にとって、ホワイトデーには飴1つでさえお返ししたことなど無かったのだ。 だが、ここで簡単に「はいそうですか」と言うわけにはいかなかった。 「───あっ、俺まだノルマ走ってねぇ!!」 「へ………?」 「じゃあなっ!!」 「ちょ……ちょー!?」 結局、浜名は飴1つと一緒に置き去りにされてしまった。 「…は、速い……」 あっという間に、彼の姿は見えなくなった。 ───すぐに角だったから、でもあるが。
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