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「えー…貰っちゃうよ?」
返ってこない返事を、当然ながら待つはずもなく、
「……じゃあ、いただいちゃいます」
嬉しそうに包みを開いて、薄ピンクの飴を口に放り込んだ。
“もらえるモンはもらっとく”
彼女が意地汚いことは、周知の事実だ。
そのまま、気分良く校門をくぐったところで、大事なものを置いたままだと気付いた。
「───ピアニシモ!」
ケーキの箱を入れたトートバッグである。
走り逃げた彼に、気持ちでは引けをとらない猛ダッシュで、愛するケーキを迎えに行ったのは言うまでもないが、
「……でも、あんたを頂くのは明日だよ」
今日だけで摂取したカロリーを消費しきるほどの運動量ではなかったはずだが。
“お菓子禁止令”たるものを言われてしまった浜名は、
「ぐすんぐすん…」
あからさまな嘘泣きをしながら、とぼとぼと家路についた。
口の中の飴を舐め終えたせいだろうか。
“ホワイトデー”の放課後の出来事なんて、校門を出直した時には、浜名の記憶から抹消されていた。
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