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学校の大半の女子がそわそわする日。
彼女は、忙しなく職員室を行ったり来たりしていた。
「山田先生! お返しはいつものやつでいいっす!」
主なターゲットは、独身の男性教師。
明日の朝食に出来そうなチョコチップ入りの大きめなマフィンを、ラッピングしたもの。
それが、今年の彼女の切り札だった。
「あー…浜名くらいのもんだよ。俺に恩義を見せるのは」
勝手に勘違いして、来月のこの日に期待できる一言を漏らす。
「来年こそは、素敵な彼女さん作って、私に紹介してくださいねっ!」
心にもないこと(慰め)を言い、彼女は次なるターゲットに駆け寄る。
「村田先生~!私の義理チョコならぬ義理マフィン、もらってくださぁいっ♪」
新米教師の“未婚・彼女いない”というプロフィールもチェック済み。
彼女が1年で最も忙しく、輝いているのこそが、“バレンタインデー”なのだ。
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