第一之噺 突然

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「影虎様、それでは・・・」 「あの方がついに・・・?」 兄弟が僧侶に迫る。 「まぁまぁ、落ち着いて下さい。  ・・・で、三郎。賞金か出現の  情報か、どちらにします?」 「・・・・・・嫌だ。  あやつの元へは、儂だけで  行きたい。」 そう言いながら、ため息をつき 足を組むと。 「・・・だが、そうもいかない  らしい。急速に近づいている。」 「あの方が、態々こちらへ?」 「いや、態々・・・ではない。  逃げている……目覚めぬ内から  目をつけられたようでな」 ―――一方。 「・・・・・・殿、あれに見るが  桔梗の・・・」 「かの人物か。  ・・・奴は目覚めておらん。  我が家に引き込むは今ぞ。」 「心得ています。」 上田城に入る為の、駐車場の 近隣。周囲に生い茂る木々の中、 ある木の上に、2人の人影。 「厄介な四人が近くにいる  らしい・・・奴らに見つかる前に  我が家に引き込むのだ」 「御意!」 「・・・ほわー・・・こんな所にお城が  あったとは・・・。」 城の入り口前、立ち尽くす1人の 青年。 「人が居なさすぎますが・・・何か  あったんでしょうかねぇ・・・。  ・・・ま、気にせず行きますか」 ―――青年の名は、 朽木狼牙(くちきろうが)という。 名前の割には至って穏やかな人物 であり、少々気が抜けている。 が、絵画の腕前は 中々のもので――――― 「…よし、この辺にしましょう」 狼牙が上田城に訪れたのは、 城の絵を描く為。 ディーゼルや折り畳み椅子は 勿論のこと、 画材として水彩絵の具を 用意している。 また、絵の具を混ぜる際の水は ペットボトルのものを用意した。
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