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狼牙はまず、城の入り口を描く
ことにした。
専用バケツに水を入れ、パレット
に白、青・・・と絵の具を出す。
そして、筆を滑らせ―――
「・・・あの門を、描いているの
ですか?」
声をかけてきたのは、
外国人かと見紛う青年。
銀の長髪に、細められた目・・・。
「ええ・・・私、絵を描くのが
好きなんです。絵を描いて
いると、心が落ち着いて…
その感覚が好きなんです」
「・・・確かに、芸術は時として
荒れた心を
鎮めますね・・・・・・たとえば、」
銀髪の青年は、筆を置き自らを
見上げてくる狼牙に手を伸ばし、
―――額に、触れた。
「・・・例えば、戦乱の世を生きた
武将が、主を裏切り・・・そして
その後、僧侶として
生きたように。」
「―――!!」
そう言われた途端、狼牙は目を
見開き、怯えるように震え
だした。
「ぁ・・・あ、ああ・・・・・・!!」
・・・震える狼牙を見て、銀髪の
青年が首を傾げた。
「・・・?封印が強い・・・・・・まさか
あの方が自らを責めた・・・?」
震える狼牙の右手を、銀髪の
青年が取り、その手の甲を見る。
「・・・璽(しるし)がない・・・・・・
・・・まぁ、何れなんとかなる
でしょう。
今は殿よりの命を果たさねば」
そう言って、狼牙を拐おうとした
その時―――
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