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―――頭の中を、見たことのない
戦乱の様子が、駆け巡っている。
断末魔の声。
奮え立つ叫び。
響く嘶き。
剣戟の音・・・・・・。
「・・・ま、さか・・・私、は・・・・・・」
「――儂らは我欲の為に
多くの犠牲を払ったにも
関わらず、平和な世を
創れなかった。
各々違った理想を持ち、それを
ただ押し付けて戦って・・・・・・
・・・何も得られなかった。
現に儂は、信頼していた部下に
裏切られ、殺されたのだから」
三郎―――信長の視線が、
狼牙へと向けられる。
「・・・殺して、後悔しただろう。
儂を殺さなければ、斯様に
怯えることもなかったろうに。
・・・だが或る意味で儂は
殺されて正解だった。
そうでなければ、上杉や真田
などと協力はすまい。
気付きはしなかっただろう・・・
『協力』こそが、平和を創る力
であることだと。・・・儂は、」
汝(うぬ)に殺されて、
初めて気付けた、と。
「・・・感動の再会は、
それまでだ」
「殿!!」
「出たか・・・伊達の小わっぱめ」
伊達の小わっぱ――と呼ばれて
反応したのは、右目に三日月の
紋様がある眼帯をした、男。
「・・・その男を、引き渡して
もらおう」
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