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とはいえ会う度毎に熱烈なウィンクが飛んでくるのは、正直…ウザイ。
「え? またウィンクかよ…」
まあ僕の方が彼を欲したのだから、せめてウィンクぐらい愛想良く返してやろうと彼を見やると…。
…いない?
「おっす! きぐーじゃん♪」
いつの間に背後に廻られていたのか、先の彼にがばっと背中から抱きつかれる。
「何してんの、いい服着てさー」
「ちょっ、こら離せ!」
ぴったりとくっついたまま頭の上から話しかけてくる奴に必死で抵抗するも、腕相撲でもう1人の仲間の女性と五分の勝率な僕がかなうはずもなく。
奴の腕は一向に緩まぬまま、近くの路地へ連れ込まれてしまう。
なんという素早さ。
「何だよ、俺をのけもので楽しいとこ行く気か?」
「…何で君にいちいち言わなきゃならないんだ」
最近、彼は妙に僕に絡んでくる。
何度かともに仕事をしているけれど、その度ごとに絡む傾向が強くなっている。
この歳でスキンシップもないだろうに。
「だって、気になるだろ。お前のこと」
今度は僕の耳元で声がした。
心なしか声に艶めきがある。
怪盗になる前によく聞いた覚えのある、夜の蝶を手懐けようとする声音。
ああ、そうか。彼は僕を…。
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