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「仕事?」
「そ」
「どんなのだ? またマフィアに潜入とかか!?」
がばっと立ち上がり、彼がまた詰め寄って僕の肩をぐいっと掴む。
「いたっ…違うけど…何そんなにムキになってるんだ?」
「あんなのならやめろよ! エロヒヒジジイに色目使ったりとか!」
ああ、なるほど。
「別にお前があんなことする必要なんてないんだっ。あんなこと…」
片方の手で僕の肩を掴んだまま、もう片方の手で僕の頬を撫でる。
色好みで知られるマフィアのボスに接近し、情報を得るという仕事の際使った、僕にとっては情報収集の手段の一つでしかない、いわゆる色仕掛けが、彼の導火線に火をつけたようだ。
憤りと悔しさと嫉妬、そして隠したつもりの情念が彼の目につぎつぎと浮かんでくる。
飾り気のない、いっそ気持のいいくらい真直ぐな視線に、これだけの感情が渦巻いてとても…惹かれてしまう。
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