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それはどんなに光栄な事だろうか。
ハッド様を見ることができるのはハッド様と共に住んでいるセバスチャン以外に、僕だけ。
セバスチャンがお亡くなりになられてからは、全ての魔族の中で僕だけになった。
僕の誇りだった。
僕だけが、ハッド様を知っている。
僕だけが、ハッド様に会える。
僕だけが、ハッド様と言葉を交わす事ができる。
ハッド様は、いつも僕が来るのを楽しみにして下さっていた。
ディナ様の手紙と贈り物を渡すと、すぐに贈り物を開けて、中の物を使ってパイや紅茶などを作ってもてなして下さった。
そして、1日中お話をするのだ。
魔族のおいしい料理の話、最近起こった事件の話、僕の身のまわりで起こったことなんかも話した。
特にハッド様が興味を持たれたのは、外の世界の話だった。
海や山や渓谷や、人間の街の事…
ハッド様は熱心に僕の言葉を聞いて下さった。
彼は外の世界に憧れていた。
他人の心を読める種族ではない僕でもよく分かった。
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