悲しき旅立ちの日

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ここが昔、ディア国という名前ではなかった時代、両隣の国と頻繁に戦が起きていた。 そんな中、国の中では唯一戦の被害に会いにくく、安全と言われている町に彼女達は居た。 「アシュ。僕は弓の練習に行くけど、一緒に来る?」 「行きたい!」 テーブルの上に出された朝食のパンを噛りながら、ディアルはシュリを誘った。シュリは嬉しそうに満面の笑みで元気良く頷く。 そんな様子のシュリを見たディアルは思わず笑みを盛らした。 「お母さん!行っても良いよね?」 「構わないわよ」 とても綺麗な容姿をした二人の母親はにこやかに微笑む。 父親は戦で兵として死んで行き、この家には母親と二人の兄妹だけになってしまった。 「危ない事はしないでね」 母親は毎日口癖のようにこの台詞を言って見送りをする。 「分かってるよ」 ディアルは肩に弓を背負いつつにこやかに微笑んで言葉を返した。 これが何時ものやり取りだ。 「行って来る」 「行って来ます!」 二人は手を繋いで家を出て行った。 ディアルはもうすぐで十六歳になり、十六歳になると兵として戦に駆り出される事になっている。 それまで、兵の訓練として毎朝ある場所で弓の練習を行わないといけないのだ。 「あれ?ディア兄、練習場ってこっちじゃないよね?」 「そうだよ。ちょっと寄り道」 町外れに向かっているディアルに対してシュリが問い掛けると、ディアルはにこやかに言葉を返す。 町外れにまで来て、更に奥へと進むと森に入った。 森の中は朝日が差し込みキラキラと輝いており、鳥の囀りが優しく耳を擽る。 「ここは何時来ても心地が良いんだ」
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