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「くそっ!あいつ、あんな手を使って来おって」
ナウスの何もかもに腹をたてながらずんずんとわざと足音を立てて歩くパラウ。
二人の側近も先程の襲撃を受けげっそりとしていた。
「だから言ったんだよパラウ。三人だけで大丈夫なのか?って」
ラインは呆れ顔でパラウに言うがパラウは、黙れ、と吐き捨てるように言った。
「もしあの時兵をぞろぞろと連れていたとするぞ?一人も死人が出ないと言えるか?」
パラウの言葉に確かに言えないなとラインは小さく呟いた。
「それに、お前等の腕は認めているし、お前等が俺を援護してくれると信じていたからここへ連れて来たんだ」
パラウの嘘偽り無い台詞はシュリとラインの心にジーンと染みた。
「ま、城に戻ったらゆっくりと体を休めたらいい。その後は装備を整えた後ナウライグ国の城に攻め込む」
散々ナウスに挑発されたためか、一番最初に攻め込むのはナウスの城だと決めている様だ。
「いつ出発するんだ?」
「…三日後だ」
ラインの問い掛けにパラウが答える。三人はそれぞれ戦への不安を拭い切れず、何時の間にか黙り込んでしまった。
沈黙が続く中、町から出て暫らく歩いた場所で、パラウは馬の存在を思い出した。城から町までの距離は長く早く移動できるようにと連れて来て、町に入る前に乗り捨てたのだ。
そして、適当な人物を雇って馬の世話をさせていたのだが、今何処に居るのかが分からない。
しかし心配は無用だったようだ。馬の世話をしていた人物がパラウの帰りを待っており、パラウの姿を見るといそいそとどこかに走って行き、三頭の馬を引きつれてパラウの前に歩いて来た。
「ご苦労だった」
パラウは心底ホッとしながら雇った人物に金貨を渡すとその人物は嬉しそうに笑い深く頭を下げてどこかに行ってしまった。
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