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二人の活躍ぶりに驚きを隠せない様子の男だったが、次には笑みを浮かべ三人の元に歩み寄って行った。
「その武器は飾りかと思ってたぜ。っと、名前何ていうんだ?俺はパラウだ。さっきは助かった」
二人の前に立ち止まるとパラウと名乗った男は握手を求め手を差し出す。
「ナウスだ。私こそお前の剣とディアルの弓は飾りかと思ってたな」
ナウスは嫌味っぽく言い返しつつパラウの手を軽く握って離した。
「ディアルと言うのか、よろしく」
「あぁ」
パラウはディアルの手を握った後、少し下に視線を送る。
「お前の名は?」
「アシュって言うの」
男は少し声を和らげて問い掛けると、アシュはにっこり笑みを浮かべて元気よく答える。
これが四人の最初の出会いだった。
両親も居ない、家も無いという状況下は四人とも同じで、戦について散々愚痴を溢し、何もかも失った悲しみを分かち合っていた。
そんな時、誰かが溢した台詞に他の三人は息を飲む。
それは
「王を殺害しよう」
だった。
いくらパラウの剣の扱いが上手かろうと、ナウスの槍の扱いが上手かろうと、ディアルの弓の命中率が高かろうと、王暗殺はひどく難しい。
しかし、戦を止めるにはこの方法が確実なのは確かだ。
「戦は嫌いだろう?」
「嫌い。戦なんか嫌い」
アシュはナウスの質問に涙ぐませながら答えた。
そこでディアルは決意する。これ以上妹を悲しませたくない。そんな気持ちが勝った。
「僕はその話に賛成だ」
「ディアル!」
「戦が嫌いなのは僕も同じ…戦が何時までも続けば、結局僕達もいずれは死ぬことになる。それよりは…」
パラウはディアルの話を聞きながら眉間に皺を寄せていたが、そうだな…と小さく呟いた。
「わかった。その話乗った」
パラウは決意を固め、はっきりと言葉にした。
「皆で戦の無い平和な国を作ろう。皆が幸せに暮らせるように…な」
「そうだな」
「あぁ」
皆は揃って相づちを打つと四人で誓いを立てた。
『皆で良い国を作って行こう』
と…。
次の日、皆はそれぞれの国を目指して散らばって行った。
誓いを果たすために、王の暗殺へと向かった。
あれから数ヵ月後、戦が終わりを告げ、街は静かになった。
それぞれの国で新しい王が君臨したのだ。
その後、新しい王の名前が広まり、四人の耳にもその情報が入って来た。
それは、皆が王の暗殺に成功し玉座に付いたという、紛れもない証拠だったのだ。
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