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「ディアル!兄妹で結婚など認められん」
「そうだ。そんなの言語道断だぞ」
ディアルは二人の抗議の言葉を聞き流すように余所へと視線を向ける。
「もう!いい加減にして下さい!!」
そんな雰囲気が嫌になったシュリは三人に向かって怒鳴り声を上げた。
「こういう事なら私は帰ります!私はまだ嫁に行くつもりはありませんし、恋愛とかそういうのも良く分かりません。だから…」
シュリはディアルを引き剥がすと、パラウに向き直り言葉を続けた。
「その…記憶戻らなくて自分の事も良く分からない状態で返事を返すなんて失礼だと思いますし…パラウさん、ごめんなさい」
パラウは、自分を傷つけないようにしようというシュリの気持ちが伝わり、思わず笑みが漏れた。
「いや良い。気にするな。返事なんかいくらでも待ってやる」
「パラウさん、有難うございます」
シュリは笑顔を浮かべてパラウにお礼を述べる。
ディアルは少し不貞腐れて敷物の上に座り小さく溜め息を吐いた。
「お前はまだ幸せ者だぞ?家族が一人生きているんだからな」
「あぁ…」
ナウスはそんな様子のディアルを励まし、杯を持たせると酒を入れてやった。
「シュリも座って酒を飲め、今日は宴だ」
「あ、はい」
シュリも敷物の上に座り杯を手にすると、ナウスが酒を注ぎ入れた。
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