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「俺の国が一番だということを思い知らせてやる!」
闘志を掻き立てられたパラウはバンッと台を叩くと勢い良く立ち上がり、文をきつく握り締めたまま言った。
そんな様子のパラウを見たシュリは戦と聞いて当然いい気はしなかった。
「パラウさま…」
「パ・ラ・ウ・だ!」
「は、はい…」
強く指摘され頬を掻きながら顔を引きつらせるシュリ。どっちが勝っても多くの犠牲を伴う戦、シュリは不安でならなかった。
場所はディア国の城のディアル王の寝室。一人無言で届いた文を見ながら小さく溜め息を吐く。文の内容を見たからでは無く、ディアル自身を悩ませる何かがあった。
「戦、か…」
人事のように呟くディアルだが、文の最後に『城に籠もっているよりは探し人が見つかるかもな』と綴られているのを見て目を見開く。
「探し人が、見つかる…?」
今まで闇に閉ざされていた心の奥で、希望の光がほんの少しだけ見えた。
「国内をあれだけ探したんだ、見つからないなんておかしすぎる。国外なら…」
ディアルはそう呟いた後に椅子からゆっくりと体を起こし滅多に開くことのないディアル王の寝室の扉を大きく開けた。
「ディアル王様!」
王の寝室の警備をしていたディアルの側近は、ディアル王の登場に驚きの声を上げた。
「リュア、アズハ。近々戦が始まるみたいだ。しっかり装備を整えておくように」
棒立ちになっている二人を余所にディアルは前を向いたまま淡々とそんな事を言うと、そのままどこかへ歩いて行ってしまった。
「戦って、何で突然…」
訳が分からず二人は顔を見合わせると、ディアルを追って歩きだした。
例えどんな犠牲を払おうとも、彼等には戦をする理由があった。
自分の欲望のために
自分のプライドのために
自分が愛する者のために
彼らは動きだした。
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