悲しき旅立ちの日

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「悲鳴が聞こえる」 「え?」 ディアルの言葉に顔面蒼白になるシュリ。 「何があったか分からない!取り合えず表に行こう」 ディアルは壁伝いに建物の表に向かっていたが、フとあるものに目が止まりシュリを押して裏側にもう一度回った。 「どうしたの?」 「…敵兵が何人も居た。もしかしたら、中の仲間もやられてるかもしれない」 小声で問い掛けるシュリに、ディアルは深刻そうに顔を歪める。 「裏も人が居ないか探せ!!」 誰かが叫んだ。 見つかったら殺されると確信し、ディアルはしゃがみ込んでシュリに背中を向ける。シュリもどういう意味か察知し、急いでディアルの背中にしがみ付いた。 子供の足で走っても、すぐに追い付かれてしまうと分かっていたからだ。 「ちゃんと掴まっておくんだよ」 ディアルはそれだけ言うと急いで走り始めた。 姿を隠すように、先程来た道をもう一度通る事にした。 「きっと、敵国は兵の卵が居る練習場を先に潰しておこうという考えだったんだろうね。…家の方が心配だ」 「お母さん…」 二人は家の方角はまだ無事なことを祈り、今ならまだ間に合うかもしれないと、微かな希望を胸に抱く。 暫らく走ると家並みが見えて来た。 「最悪だ…」 その光景を見て思わずディアルは呟いた。見覚えのある家並みではなく、そこはまるで地獄のように炎で赤く染まり、もうもうと煙が立ち込めていた。 「アシュ、顔を伏せておくんだ。何も見ちゃいけない」 シュリは言われた通りにディアルの肩に顔を埋める。 地面には至る所に住民の死体が転がっており、ディアルはそれを見た瞬間軽い吐き気を催した。
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