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「ディア兄…アズハやお姉ちゃん達は?」
シュリの口から、知り合いの名前が出てディアルは息が止まりそうになった。
「もう何も見たくない…もう沢山だ」
ディアルは弱音を吐いてそんな台詞を吐いた。
しかしシュリはそんなディアルを見て痺れを切らし、アズハ達の住んでいる家に向かって走りだした。
「アシュ!!」
ディアルは震える手を握り締めながら、シュリを追い掛けて行く。
シュリは然程遠くない場所にある家の前で止まると、小さく深呼吸し扉を開て中に入って行った。
「アズハ…お姉ちゃん…」
シュリは小声で呼び掛けるが、中からは返事が返ってこない。
「アシュ、勝手に走り回るんじゃない」
ディアルはシュリを追って家の中に入って行く。
中は静寂に包まれ、生きものの存在を感じさせない程だった。
更に奧に入ると、誰かが横たわっているのが見えて、二人はひどく緊張した。
刹那、背後でゴトっと音がしたかと思いディアルはとっさにその方向に視線を向けると、棒を振り下ろそうとしているアズハの姿があった。
「「アズハ!?」」
「え?」
ディアルとシュリが声を揃えてその人物の名前を叫んだ。
アズハはやっと自分が殴ろうとしていた人物の正体に気が付き棒を下に降ろす。
「二人とも生きてたのか!!」
アズハはシュリに抱き付き頭を撫でて生きている温もりを確かめた。
「ディア兄と出かけてて無事だったの。お姉ちゃんは?」
「大丈夫、大怪我はしてるけど無事だよ」
「よかったぁ」
シュリの質問に笑顔を浮かべてアズハが答えると、シュリは心底安心して肩の力を抜いた。
ディアルはフと思い出し、倒れている人物に視線を向ける。その人物は知っている人ではなく、敵兵だったのだ。
「これ、お前がやったのか?」
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