悲しき旅立ちの日

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どれくらいたったのだろうか、シュリは泣き疲れて小さな寝息をたて始め、メリンはそんなシュリを抱いたままディアルから今日あった事を聞いていた。 「練習場が襲われたという事は、もうこの町は安全では無いわね…」 シュリを起こさないように小声で喋りながら、メリンは溜め息を吐いて俯く。 練習場は兵士を育てる場所として唯一守られていた場所だったため、育てる兵士が居なくなった今、町を守る必要も無くなったのだ。 「恐らく訓練中の兵士で生き残ったのは僕くらいだと思う。命拾いはしたけど複雑だ…」 「でしょうね。訓練仲間も母親も殺されたのだから」 二人はそれから暫らく黙り込んだ。 「どうするの?庶民としてこの町に居られるのは、もう一ヵ月も無いんでしょ?」 「あぁ…」 ディアルは家族で唯一生き残ったシュリの寝顔を眺める。 自分が兵士として出て行けば、シュリを一人にしてしまう。自分がシュリを守らず、誰が守るというんだ。 ディアルは心の中でそう呟く。 拳を強く握り締め、何かを決意したかのように口を開いた。 「僕は国を出る」 ディアルの言葉にメリンとアズハは驚きの表情を浮かべた。 「国を出るって、つまり、兵士にはならないって事か?」 「あぁ、僕がシュリを守って行かなきゃいけないんだ、国を裏切る形になったとしても」 アズハの言葉にディアルは全く迷いの感じさせない、強い視線をアズハに向ける。 「ディアル兄ちゃん…」 三人は暫らく黙り込んだ。 部屋にはシュリの気息正しい寝息だけが小さく聞こえた。
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