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「遅れてすみません」
沈黙が続き気まずい雰囲気を漂わせている最中、一人の男の声が響いた。どうやらディア国の者が到着したようだ。
「ん?お前は?ディアルはどうした?」
ディアルの姿が見えない事に疑問に思ったパラウは今来た男に問い掛けると、男は畏まったようにパラウを見て言った。
「僕はディアル王の側近でリュアと申します。ディアル王は国の会議には出席しませんので、代わりに僕が参らせて頂きました。結論はそちらに任せるとのこと」
その言葉に腕組みをしたままのナウスの眉がぴくりと動く。
「そうか、あの臆病者は私に会うのが恐いらしい。まぁ良いだろう、会議を始めようじゃないか」
リュアはナウスのディアルを貶すような言い方に顔をしかめるが言い返すような事はしなかった。その方が賢明な判断だろう。何か言い返すようであらば、ナウスの事だ、処刑などたやすい事に違いない。
「で、だ。戦についてだが、この町を勝者の物…というのはどうだ?何かと商品があったほうが良いだろう?」
「悪くは無いな」
ナウスの言葉にパラウはなるほどと言わんばかりに頷く。この町は全国の中心部、自分の国に引き入れられれば何かと都合が良い。
「商品は決まりだな。後は勝敗だが、負けとなるのは…」
ナウスは細い目を更に細くして続きの言葉を言おうと口を開いた。
「負けを認めるか、王の死」
皆が息を飲む。三つの国の王は血の繋がりとは関係なくトップに上り詰めた者達が王になる。今ここでどこかの王が死んだとしても、必ず他の者が意志を受け継ぐ事となるのだ。一人の王の死は国の混乱を招くが、新たな王が君臨すれば混乱はいずれ治まり新たな制度が誕生する。悲しくはあるが、王など所詮飾りにすぎない。
その事を王である本人達もよく分かっていた。
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