冒頭//unfortune

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普段使わない理由はこの生臭さと暗さだ。生臭さの原因は周知で、居酒屋が出すゴミである。 だから彼は普段通らないのだが…今日は彼にとって特別であり、また不運な日だ。 早く抜けよう。 街灯があまり届かないここは入り口も出口もあるのに密室に感じられる。 密室。 嫌な単語だ。 ここにいると、背後に何も居なくても、何かに迫られてる気がしてまう。 あと少し。 そう思った。 その瞬間、足が止まった。 背後には気配。 背筋には悪寒。 背後には誰も居ないはず。 気のせいだ。 気のせいだから振り向くな。        振り向くな。        振り向くな。 思考が本能に切り替わり、彼の脳に訴える。 振り向けば帰れない。 振り向けば終わりだ。 振り向けば―――死ぬ。 ………死ぬ…? 彼は走り出した。逃げるために。 しかし、 「痛ッ…」 走り出した瞬間に転んでしまった。 ヤバいヤバいまずい早く、 立って、逃げないと 立とうとするが、意に反し、また転ぶ。 「なんでッ…―――え?」 言うことを聞かない足を見る。 「足が―――無い…?」 足が無い。 正確には右大腿部から下と左膝から下が無い。      . . 彼の足は焼滅していた。 「足が、、え、痛、な―――ああああああああああ」         キ エ 更に右足が更に焼けていく。 「死にたく、な、、」 「残念だね、その望みは叶わないよ。」 「え―――?あ」 それが彼が聞いた最後の声だった。 今日は彼にとって不運な日だ。
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