第一話「決別と出会い」

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だが、 死体は存在しない。 何故なら、 その場所から流夜の体がなかったのだから。 轢かれたことは間違いなかった。 証拠に、 流夜を轢いたトラックのフロント部分が人が勢いよくぶつかったようなへこみがあった。 だが、 死体は存在しない。 まるで、 神隠しにあったかのように。 「せめて、 俺達のところに帰って来いってーの。 まったく、 最後の最後に親不孝なことしやがって」 静寂。 写真を見つめるマスターの肩が微かに震えていることに後ろから見ていた修哉は気づく。 残りの珈琲を一気に飲み干して横の席に置いてあった鞄を脇に抱えて席を立つ。 「……ご馳走様でした。 美味しかったです」 ドアを閉めてカランカランと来客を知らせるベルを鳴らし、 修哉はそっと店を後にした。 出てすぐ、 修哉は自宅への岐路へつくと自分の口の中の異変に気づいた。 「……口の中火傷しちまった」
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