斜陽

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 「あとは次の角を右折して、次も右折。そしたら前方に玄関が見えるはずじゃ。玄関を抜けて100mぐらいまでは走っておけ。追手が来るかもしれんからの」  もはや返事を返す気力もない。言われた通りにただ走るだけだ。そして1つ目の角を曲がり、2つ目の角も曲がろうとしたところで  「グッ!!!」  「おっとぉ」  誰かにぶつかった。そのまま相手に向かって倒れかかりそうだったが相手が支えてくれたためそうはならなかった。ただ走りを止められたことで、今まで振り絞っていた気力のようなものが折れたのか座り込んでしまうしかなかった。  「おい。グラシア総長にぶつかったのだからさっさと謝れ。さもないとその首を切り落としてやるぞ。」  だがグラシアと言われた男の後ろにいた男たち6人ほどが得物の柄に手をかけ、そのうちの1人がいきりたった様子で怒鳴り散らしてきた。  「ぶつかったぐらいで怒鳴るなよなぁオイ。気にするほどのことでもないだろうに。」 だが当の本人は気にするようでもなく平然としている。しかし眼だけはギラギラしていてこれから獲物を狩りに行く獣のようである。  「何を焦ってるのかは知らんが危ないから走るなよなぁオイ。 ゴツい手で俺の手を無造作に掴むと無理矢理立たせた。そして後ろの男たちに振り返ると、そういや奴もちょうどこの小僧ぐらいの歳だよなぁおいなどと話をしている。  「今のうち外に出るのじゃ。」  「とは言ってもあの人たちがいるから通れないぞ。」  「大丈夫じゃ。裏口というものが1つあるそこから出ればよい。ちょうど主の真後ろにある扉が裏口じゃ」  「おっと。ちょっと待てよなぁオイ。」  その言葉を聞いて後ろに振り返ろうとした直後あの男が声をかけてきた。
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