斜陽

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 近場にある部屋に入った。大きさは俺が寝ていた部屋と大差ない。ただ中央に大きめのテーブルと椅子があるだけだ。  「さて高嶺悠蒔。いろいろと聞きたいことがあるが、まず弁明はあるか?」  グラシアが部屋の奥側にある椅子に座った。俺はこちら側の椅子に座って対応する。  「弁明もなにもなにを弁明すればいいのかわからん」  「やはり記憶障害か。だがまぁ当然の結果といえば当然の結果だよなぁオイ。」  「言ってる意味がわからないのだが。それに俺はミレスだ。」  「…………」  今は腰に結びつけてある剣がなにか言いたげな雰囲気をかもしだしているがかまわず続けた。  「なにより何故いきなり手紙に死んでくれなんて書かれなきゃならない。」  「少し黙れ小僧。こっちだって時間がないなかで来てやってるんだ。そろそろ少しはまともな話を聞かせろ」 恐怖。ただその一言につきる。声が大きいわけじゃない。声量は変わっていないが、声に気迫がこもっていて体の芯に響く感じだ。 「小僧も今の状況が分からないみたいだが此方も時間がない。だから結果だけ話してやる。原因は自分で調べろ。」  グラシアは椅子から立ち上がり俺の横で見下しながら  「お前は人を殺した。総勢100人弱をな。何が原因だったのか、何故そうなったのかは知らん。ただ結果としてお前は殺した。何の躊躇いも慈悲もなくな。だからお前は犯罪者だ。」  殺した。その一言が重りのように身体にのしかかってくるように感じた。
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