斜陽

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 「待たせたな。高嶺悠蒔。私はフォーマルハウト王国軍大総長(グランドヘッド)の八枝(やえ)・グーグ・バイエルだ。」  「待たせたな小僧。大総長が直接逢いたいと言ってきてな。上司の頼みを断るわけにもいかないから連れてきたってわけだ、なぁオイ。」  「そうですか。それより俺の名前はミレスだって何回も言ってるじゃないですか。」  「それは却下だ。調べたところ住民登録等は高嶺悠蒔で登録されている。だから今更名前を変えさせるわけにはいかない。それに名前を変えられては混乱をきたす可能性もあるからな。」  「それに名前なんてなんだっていいだろう。なぁオイ。結局のとこ名前なんてものは記号と一緒なんだ。○にも×にもそれぞれ、まる、ばつ、という名があるがそれは○、×を口頭で示す記号であるだけなんだ、なぁオイ。それに小僧は犯罪者で俺たちの部下になる。此方の指示には最低限従ってもらわないと、なぁオイ。」  「…わかったさ。好きに呼べばいい」  俺の行動1つで生き死にが決まる。ならなるべく従順にしておくべきか。なにより言い方は悪いが、この人たちに取り入っておいて損はしないだろう。  「俺たちはこれでも王国軍のNo.1、No.2だ。だから取り入っておいて損はしないぜ、なぁオイ。」  一瞬思考を読まれたと思い内心は動揺したが表面には出さないようにと試みた。  「グラシア。そういう言い方はよせ。だからお前は誤解されやすいんだ。」  「すいませんね大総長。」  グラシアは本当に謝っているような態度ではなかったが八枝さんは大して気にはしていないようだった。それよりも自分よりも年上の相手になんの躊躇いもせずに命令できるとは。人の上に立つには些細なことは気にしていられないということなんだろう。
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