斜陽

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 「話が逸れたな。高嶺悠蒔。」  八枝さんの凜とした声が耳に届いた。グラシアは年上なのだが、どこか友人と話すときのような気軽い感じで話しかけてくるため上官ではあるが敬称は付けなくてもいいかなぐらいに思ってしまう。だが八枝さんはついつい敬称をつけてしまいそうな一種、カリスマみたいなものを感じる。  「これから君には配属先を言い渡す。そこで確りと頑張って国のために貢献してもらいたい。  高嶺悠蒔。現在を以てフォーマルハウト王国軍に在籍するものとする。部隊は第2特務、階級は中尉。なお第2特務では隊長の任に着いてもらう。」  「………」  「高嶺悠蒔。聞いているのか?何らかのアクションを起こしたらどうだ。」  「すみません。言ってる意味がわからなくて…。」  中尉というのはわかる。肩書きでいえばかなりのエリートだ。なぜそこに俺を置くのかわからない。しかも隊長だ。それに第2特務とはなんなんだ。  「俺には何がわからないかがわからないんだが。」  「第2特務がなにかということと、何故いきなり中尉なのかです。」  「第2特別実務部隊。通称第2特務。そこの部隊で隊長をするだけ。ただそれだけだ。何故中尉にしたのかはお前に不満を溜めさせないためだ。  お前はこれから戦場の最前線に出なければならない。そんなお前がただの1兵卒では危険な割にあわないだろう。不満を募らせた結果誰かを殺すかもしれない。それならば中尉に置いておきある程度の優遇を図る。要はアメとムチということだ」  そういう意図があったというわけか。しかしアメとムチだなんてまるでビスマルクだ。…いや今のは語弊があるか。近年ではアメとムチはその“行動”をアメとムチというが、実際は評価。つまりはビスマルクが行なった政策を“評価”するための言葉としてアメとムチという言葉が生まれたのだが
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