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「だれかを殺したりするなんてことはないと思いますけどね。」
「絶対というものはない。一応保険のためだ。なおいきなり隊長とはいっても指揮・戦術を戦闘中に指示するのはまだ無理だろう。そのあたりは前任の隊長で、君の補佐官となる者と相談して決めてもらいたい。説明は以上だ。何か質問はあるか?」
「1つだけ。俺はこれからどこで生活すればいい。というか何故俺はここにいたんですか?」
外に出ようとした時に内装を見たが、病院だと一目でわかるようなものだった。“昨日”まで皆と普通に生活していたはずだ。怪我や病気はしていない。なのに何故いきなりこんなところにいるかわからない。何より誰とも知り合いに逢っていないのが不可思議だ。 「前者についてだが、これからは第2特務専用の宿舎で生活してもらうこととなる。電気・水道完備、日当たり良好。国営管理であるため特に問題はないはずだ。
後者についてはお前が“7年ほど”ずっと眠りについていたため、いつ目覚めてもいいように入院させていただけだ。」
「何をバカなことを言うんですか。俺は昨日も皆と生活を送っていましたよ。」
「別にお前がどう解釈しようとも構わない。ただ俺が言ったことは事実だ。」
俺は洞察力がある方じゃないが八枝さんが嘘をついているようには見えない。グラシアの方も見た。真剣に話を聞いている。当然俺を騙しているような色は見えない。
「じゃあなんで俺は眠っていたんですか?何かあったんですか?」
「質問は自分で1つだと言っていただろう。」
「じゃあもう1つだけだ。これだけ教えてくれ。」
嘘をついていないことがわかると急に不安になってきた。そう思わせるようなことが幾つかあったからだ。
「そうだとしても教えられない。今のお前に教えてもお前を絶望させるだけだからな。既にお前が殺人者であるということはわかっているはずだ。それだけでも絶望を味わっているにも関わらずさらに絶望を味わうこともないだろう。」
確かに殺人という罪を消すために闘うことを決意した。そしてその罪を消すためにさらに人を殺そうとしている。仮に罪が消えたからといって人を殺したことに変わりはない。覚悟は確かに決めた。だが心を絶望が蝕んでいるというのがわかる。
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