斜陽

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 結局それ以上は何も教えてもらえなかった。というよりも自分自身がこれ以上聞くことを拒否していたのかもしれない。  先ほどのやり取りを頭の中で繰り返していた。別に何かが変わるわけではないが自然とそうしていた。気が付くと案内役らしき人の後ろ、2、3mを歩いていた。その人はチラチラと後ろを見てくる。その行為が何を意味しているかはわからないが、少なくとも俺がちゃんとあとをついてきているかを確認するためのものではないということだけはわかった。だからといってそのことを問う気にはならなかった。  「着きました。ここの2階、203号室が貴方の部屋です。こちらがその部屋の鍵です。管理人もいるので紛失した場合はそちらに声をかけてください。では失礼します。」  彼は口早に説明すると鍵を渡して行ってしまった。説明で理解できないところはなかったが少し寂しく感じた。起きた時は夕方であったため既に夜の帳が下りている。こんな時間に誰もいないであろうから今日はもう休もう。眠気はないがそのうち眠れるはずだ。  灯りはついているがそれでも多少薄暗いため館の大きさははっきりとはわからない。それでも見たところによると、4階層あり、1階層につき約12部屋程度あると見られる。こういった建物が他にもあるため、ここ一帯の建物は全て第2特務、もしくはその他の部隊のものだろう。いずれにせよ軍関係のものであろう。
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