斜陽

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 「なんでこんなことになってしまったんだ。」  ここまでに来るに至った経緯を反芻してみる。  あれから部屋にやって来た人たちと5人で夕飯を食べ、酒を舐める程度(と言うには些か語弊があるのだが)にたしなんだのだが  「カラオケに行こう」  その一言から全てが変わった。酔った1人がそんなことをノリで言うものだから、俺以外は全員賛成してしまい結局行くことになってしまった。多数決という民主主義の原理を恨めしくおもう。  「さぁ中尉の番ですよ。」  顔は赤いが全然酔ってなさそうな沙月さんがマイクを渡してくる。他の歌を聞いていたが皆上手かった。ノリノリで来たのだから下手ではないだろうと思っていたけど、予想以上に上手かった。  こういう状態で断るわけにはいかない。しかも事態が完全には飲み込めないが俺は明日から隊長なんだ。険悪な状態にならないためにもどうにかして歌わなければ。  リモコンを使って曲を設定すると、前奏のピアノとヴァイオリンの綺麗な音色が聞こえてきた。  「遠く広がる 空を見上げて 流れる雲を 掴むように 腕を伸ばしてみる 指先に風 絡ませながら 届かない高さが痛くて 瞳をそらしてた  きっと幸せ願うこと 間違いじゃない なのに何故誰かの笑顔が 消えてしまうのだろう 心に押し込めた想い 永久の季節の中 立ち止まってさまよう 気付いて受け止めてくれた あなたと一緒なら前に進めるから 澄んだ青さに 溶け込む祈り 深く深く海に沈んで この地に行き着いた そーっと誰かが願うこと 折り重なって どこかで狂った歯車を 止められないままで あなたがくれた優しさで 変わっていく日々を しっかりと踏みしめて とまどいながらも歩くよ だから覚えていて きっと頑張るから 心を満たすこの想い 永久を越えて続く 確かな約束 背負った痛みや悲しみ あなたと一緒なら 抱えていけるから」
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