斜陽

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 なんだか友達、又は大切な人たちとの絆を唄ったような歌だった。本当の友情や絆の強さといったものをテーマとして歌っている感じか。しかも先ほどのとは違って明るめの曲調であった。  「では中尉、次は私が唄いますから聞いてくださいね。」  沙月さんは今唄った女の人からマイクを貰うと、手慣れた手つきで曲を入れ始めた。沙月さんはさっきはやめようと言っていたが、なんだかんだで楽しそうだ。  「紫に煙る街を見下ろしながら   幾千もの雨音に誓う   薄紅に染まる頬を優しく撫でて   繋いだ手は離さないで   熱くこの胸に響く見果てぬ願いは姿を変えて時の流れを越えて降り注ぐ   抑えても抑えきれない揺れるこの想いは   止めどなく寄せる波のよう   閉ざしても閉ざしきれない揺れるこの瞳は   巡りゆく戸惑いの中で何を見つめるの   崩れ落ちていく砂の器のように    満たされずに想いだけ募る   こぼれ落ちてゆくそれが運命(さだめ)のように   指の隙間すり抜けてく   紅くその腕に刻む   儚き願いは夜空を照らす光と影に飲み込まれてゆく    伝えても伝えきれない汚れなき言葉は    限りある地平を彷徨(さまよ)う    数えても数えきれない   結ばれぬ糸目を限りある永遠の中で探し続けるの   抑えても抑えきれない揺れるこの想いは    止めどなく寄せる波のよう   閉ざしても閉ざしきれない揺れるこの瞳は   巡りゆく戸惑いの中で何を見つめるの…」
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