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連綿と続いてきたものを、あの事件があったからというだけで終わらせるわけにはいかない。なによりあの事件は結果的には中尉がやってしまったことではあるが、中尉のせいではないことはわかっている。
「これは既に決まったことだし、確かに上官の命令は絶対だけど私は納得いかない。」
そう言うと舞は部屋へと戻るように帰ってしまった。私が御家の事情に頑ななのは、入軍当時からだ。なによりもう決まったことだ。だから舞もこれ以上は言っても無駄なのはわかっているんだ。
「(舞にはいつも心配させてしまっている。だからあんなに怒ってくれたんだ。)」
でも、と思う。
「(見たところ今は私しか好意的な人はいない。それはしょうがない。だけど皆のうち誰か1人でも来てくれれば少しは変わるかもしれない。だからそれまでは私が中尉をお守りしなければ)」
固く決心をつけると舞と同じように部屋に戻ることにした。
――――――――
呼び掛けてきた2人を見ると沙月さんがいた時には見せなかった凶暴な目をしている。 「えと、なにかな。」
先ほどまで見せなかった表情に戸惑い、か細い声となってしまう。
「なにかな、じゃねぇよ。なんでお前がここにいる。何故すぐに処刑されないんだ。」
すぐにでも掴みかかってきそうな語気ではあるが、もう片方の人物―ルースと言われていた―が抑えているため、それができないでいる。ただそのルースも俺に対して冷ややかな目を向けている。
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