斜陽

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 「お前がここにいるだけで第2特務の品位が下がるんだよ。しかも何が中尉、何が隊長だ。なんで沙月が隊長から下ろされないといけないんだ。何考えてるんだよ大総長と総長は。」  俺は何も答えない。いや答えられない。この2人に何か言ったところで逆効果のようであるし、何より、俺は覚えていないが、俺が人を殺したことに嫌悪感を覚えているといったところだろう。いや違うな。この2人も軍人だ。ならそれ自体は気にすることではあるが、2人にとっては重要ではない。ならば俺が第2特務に入ることで嫌な噂等が流れたりするのが嫌なのだろう。  事件の当事者らしい俺が言えることではないが、自分に関係のあることにだけ過剰に反応するのはどうかと思う。例えば野良猫が死んでいたとしても、見た人はお墓を作って埋めたりするなんてことはまずしない。見てみぬふりをするだろう。可哀想だと思った人がいたとしても、埋める人はおらずものの30分ほどすればこのことは忘れてしまう。  ではこれが自分が飼っていて、とても大切にしていた猫が死んだならどうなるだろうか。まず見てみぬふりはしない。ちゃんと埋めてあげるだろう。それにすぐに忘れたりはせずに悲しみにくれるだろう。  同じ質の命であるのに自分と関わりがあるかどうかで扱いがこんなにも違う。こういうことは飛行機事故等でもいえる。事故を起こした飛行機に同じ国籍を持っている人が乗っていればメディアでは大きく取り上げられる。だが乗っていなければ、取り上げられずにすぐに次のニュースに進んでしまう。  同じ人であるにも関わらず、このように関係がなければ死のうがどうしよいが別段構わない。といったようにとれるものが多くある。  自分を弁護したいというわけではないが、このように関係のない人が死んだりしても構わないと思われるような言動・行動は悲しく感じてしまう。
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