斜陽

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 「……。まぁそういうことだから勝手にしろ。少なくとも俺たちはお前の命令は聞かないからな。」  そう言うと2人とも自分が座っていたところに戻ってしまった。自分と彼らとの距離が、実際に座っている場所以上に離れているようで辛かった。  いろいろと考えていたため大半は聞き逃してしまったが、少し聞いただけで気が滅入るように感じるのだからもしかしたらよかったのかもしれない。 ―――――――  あれから沙月さんと一緒に出ていった女の人によりカラオケは終わりを告げた。俺は前にも同じようなことを言われていたのでショックは少なかったが、それでも辛い。そして沙月さんもどことなく元気がないように感じたが、それを気にする余裕はその時はなかった。今はなんとかしてあげたいとも思うが自分ではどうしようもないと考えてしまう。  「(だけどそれはただの言い訳だよな。)」  確かに言い訳だ。なんとかしたいとは思うが知り合って直ぐの自分には何もわからない。そういったアンビバレンスな思考により堂々巡りとなってしまう。  「(明日だ。もし明日になっても同じような感じだったらすぐに声をかけよう。)」  結局は逃げてしまう。だがきっとこれはデリケートな部分だ。なら気になったからといっておいそれとは聞けない。正当化するように言い聞かせると寝転んでいたベッドから起き上がった。
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