斜陽

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 目的はあの剣。先ほどは置いていった剣を手に取る。形容(かたち)は普通のものとは変わっているが、何故か俺の手に確りと馴染んでいる気がする。  「主よどうした。もうこんな時間じゃ。寝た方がよかろうに。」  「いやそうなんだけど、いろいろとあってな。」  「ふむ、まぁよかろう。せっかくじゃから愚痴でもなんでも聞いてやるぞ?」  どこか冗談めかした言い方だ。顔が見えたら絶対笑っていると思う。だが冗談でもそう言ったのだから聞いてもらうか。  本当は戦いに不安があるから素振りでもしようと思っていたんだが  「まぁ愚痴ってわけじゃないが聞いてくれ。1つは対人関係みたいなものだな。ある人が元気がないみたいなんだが深入りした方がいいと思うか?」  「一応聞くがそやつとは面識があまりないんじゃろ?ならば今は関わるべきではない。」  「なんでだ?」  「例えば漫画などであるならば、こういうときはそやつと関わっていくべきなのじゃろうな。だがこれは現実じゃ。その問題が深ければ深いほど、それこそ、そやつの人生を形成するほどの問題であるならばそんな面識がないやつの言葉は全く心に響かん。何を言うておるのじゃこやつは、何を知ったような口をきくのか、程度で終わってしまうことじゃろう。」  「でも漫画とかだと…」  「それは漫画じゃからじゃ。先ほども言うたがこれは現実じゃ。人は人の心をそう簡単に測れるものじゃない。ましてやそんな面識がないやつが測れるとは到底思えん。  もし本当に面識がないやつが測れるものであるのならば、それは大したこともない問題である場合がほとんどじゃろう。」
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