斜陽

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―――――  「ねぇリリア。ミレスが帰ってきてからもう5日も経っちゃったよ。まだ起きないのかな?」  「そうですね。もう起きてもよさそうなものですが。ただ医者に見せたレノ先生が言うには、まだ花粉が体内に残っているというそうです。だから時間的にはあと2、3日もすれば目覚めると思います。」  「まだ待たないといけないのかぁ」  語尾が尻窄みになってしまう。せっかくミレスが帰ってきたから、すぐに謝ろうと思っていたのに意識不明になるだなんて。まぁ生命には大事ないみたいだからいいけどやはり心配になる。  「そういえばリリアは私と違ってあんまり心配そうじゃないね?」  「すみません。ですが華の効能についてはフィアよりも知っていますので、あまり心配せずともよろしいと思いまして。それに私の分もまとめて、フィアが心配してくれていますから。」  「そんなことないよ。私は全然心配してないから。」  リリアの悪戯っ子のような微笑を見て、ついつい心象とは別のことを言ってしまう。素直じゃないなぁ、と自分に苦笑してしまう。  「それはそれとして実際のところはミレスを信頼しているからですね。もちろん知識として知っていたとしても心配はするでしょう。ですがそれ以上にミレスは大丈夫だと信じています。ですからさほど心配はしていないのです。」  その言葉に私はかなわないなぁ、と思ってしまう。と同時に恨めしく思ってしまう。  そんなリリアの顔を見ていると玄関からインターホンの鳴る音が聞こえてくる。  「私が出てくるよ。多分レノ先生かナリスさんだし。」  今は時間的には授業があるため、訪ねてくるのはおそらくこの2人くらいだろう。  「ではフィア。お願いしますね。」  うん、と頷くとリリアから逃げるように玄関へと向かった。 ―――
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