暗雲

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 朝。沙月さんと顔を合わせたが昨日は俺の見間違いだったかのように普通に見えた。(普通とはいってもいつもの沙月さんを知っているわけではないため違うのかもしれないが、見たところによると普通そうだった。)  「中尉。体調はどうですか?時間もないことですから今日は各国の状況や戦術等について説明します。いきなり全部を理解するのは難しいと思いますので、頭に入れておいていただければ充分です。」  「わかりました。だけど俺が本当に隊長でいいんでしょうか?」  いくらなんでも戦術なんか全く知らない俺が隊長なんて務まる筈がない。  「戦術なんていっても大したことはしません。それは私の話を聞けば分かると思います。それに中尉が慣れられるまでは私が指揮を取りますからご安心ください。」  沙月さんはまたしても俺の部屋に来ているのだが、彼女は―――部屋の奥の椅子に―――窓に背を向けて椅子に座った。  沙月さんは、では、と前置きした。  「知っていると思いますが、この国はフォーマルハウト王国です。この大陸の最北に位置します。ここから少し北に行くとアボラス湖がありその更に北にはアル・リシャ山脈があります。春には桜が見頃になるので一度行ってみることをお薦めします。  我が国を取り巻く状況ですが、南西にあるサダルメリク王国。この国とは昔に姻籍関係があったために今でも友好関係が続いています。技術提携等も行なっているようです。  逆に南東のハマル王国とは敵対関係にあります。戦争が始まったとしたらまずこの国と戦うことになるでしょう。行軍において困難となるような場所はありません。そのため正面からの戦いとなるでしょう。」
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