斜陽

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 まず思い付いたのは文章に脈絡が全くないことへの戸惑い。何を述べたいのかがわからないからだ。次に感じたのは矛盾。俺には馬術をする知り合いなんていないし、なにより葵市という場所も知らない。  そして最後に感じたのは文章の異様さと困惑。普通とは違う場所での改行は大概は、先頭の文字の縦読み、末尾の文字の縦読み、先頭から右下への斜め読み、末尾から左下への斜め読みetcetc…が考えられる。末尾は揃ってないし、斜め読みでも途中で途切れている。だからこれは1番オーソドックス先頭の縦読みだろう。縦読み、斜め読みなどは本当の気持ちであり、普通に書かれている文章は嘘だとするのが一般的だ。とすると  早9市音馬い院です  これを変換すると「はやくしねばいいんです」。俺は誰かに死ねと言われるほど怨みを買った覚えはない。むしろペルソナを以て皆と良好な関係になるようにしていたはずだ。テンパってるから思考が停止している可能性もあるが、これは冷静だとしてもわからないだろう。  とそこで、コンコンとドアをノックする音と共に誰かが入ってきた。ふくよかな体躯をした白みがかった髭が特徴的な初老の男性だ。  「起きていたのか。もう大丈夫なのかい?まぁ聞くまでもないことだがね」  開口一番そう尋ねてきた。ただその言葉には棘が見え隠れしており、医師として事務的に聞いてきているような感じだ。初対面であるはずにも関わらず何故こういう対応なのだろうか。それでも無視するのはよろしくない。ちゃんと答えておかねば  「大丈夫ですよ。ただここがどこなのかがわからないですけどね。ここがどこだが教えてもらえません?」  「それは君が気にするべきことではない。どうでもいいことだ。問題がないならこれで失礼させてもらう」  医師らしきその男性は俺の質問をあっさりと斬り捨てると部屋を出ていこうとノブに手をかけた
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