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美奈の母親は床に泣きくずれ、父親はその目から溢れるものを拭う事もせず、ただ天を仰いでいた。……両親共々言葉が出ない…僕は、その光景を見たのだが…不思議と涙は出なかった……
しばらくすると、母親の悲しみと怒りの矛先は僕に向けられた。『どうして美奈が…何故なの?ねぇ……教えてください…』と僕に歩み寄るが、父親が取り押さえるように『やめないか!』と…
何故かはわからないけど…僕はただただ、「すみません」としか言えなかった……
集中治療室に運ばれた美奈は、静かに目を閉じている。美奈の側まで行くとさっきまで一滴もでなかった涙が、急に溢れ出てきた。美奈の手を握り、「ごめんな…」の言葉を何回も繰り返してうずくまった。
『…………だよ…』
「えっ?」…美奈の顔を見る。うっすら目を開けているのがわかった。美奈の口元には酸素を供給するマスクをしてあるが、そのマスクの近くまで耳を傾け美奈の声を聞く…
『…す…き……だよ…』
「あぁ、俺も好きだ、美奈いいからしゃべんな、苦しいだろ?」
…でも美奈はこう続く…
『…ごめん…ね……ふあんなきもち……させて……ごめ……な…さい』
「謝んなよ…俺が悪いんじゃん…俺のせいだよ…美奈ごめんな…」
美奈は静かに自分の手を僕の頭にやり、ゆっくり撫でてくれた。
『…でもね………あえて………よかった……こんなにわたし……のこと……あいしてくれた…………ありがとうね………』
「馬鹿言うな!これからもだろ!愛してくれたじゃねぇーよ!愛し続けるんだよ!だからもう…しゃべんなくていいから…」
『……いきて…………わた………ぶん………で……』
……あの時美奈が最後に言った言葉のあと、美奈は優しく愛おしい顔をしていた事…僕は絶対忘れない…
そして、気付いたよ。人を想う気持ちを…想うだけじゃなく想われることの意味……
……でも、また無くしたあとに気付いたよ……こんなにも愛し合ってたのに…美奈…
……生き続ける……
……お前の分まで……
……俺の中で生き続けような…美奈…ずっと一緒に…
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