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波の無い、真っ白な海。
そこに出来た些細なよどみ。
それは或る世界だった。
その淀み、その小さな光りの中を突き進んでみると、一つの広大な大地が広がって、空は二つの大きな太陽が照らしていた。
そんな世界。
鮮やかな原色の殺風景。
そこに垣間見えた命。
影の無い、どこまでも続いてるような草原の緑に、星のような白い光りが一つ。
それは少年だった。
その光沢のある金髪の少年は穢れを知らず、風にそっと波うつ草の上で寝転んでいる。
少年の名はモネ。
モネは白っぽい肌に真っ白な服を着ていた。
モネの眼はそっくり空を映したように碧く、そしてまどろんでいた。
すると長い栗色の髪の、モネと同い年くらいの可愛らしい少女が太陽を遮った。
少女も白い肌に真っ白なワンピースを着ている。
そして、いたずらっぽく笑みを浮かべて、寝転んでいる彼の上に両手いっぱいに抱えてた色とりどりの花を散らした。
モネは花びらが眼に入らないように、ゆっくり顔をそらす。
「何するんだよ、ナナ」
モネは眠りを妨げられ、ほんの少しの文句の混じった声を出した。
少女、ナナは少しだけつんとする。
「そうやってモネがいつも寝てるから」
言い終わると、ナナはすぐに笑みを取り戻してモネの隣りに腰を降ろした。
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