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緩やかな風になびいたナナの髪の上を、太陽の光の波が流れていた。
「気持ち良い風」
ナナはただ感じたままを心地良さそうに言う。
そんな彼女をモネは好きだった。
きっと嘘なんて、これっぽっちも知らないから。
「ねぇモネ、この風に乗ってどこまでも飛んでいきたいと思わない?」
ナナはそう言うとそっとモネの手を握った。
モネは今にも眠ってしまいそうだったけど、その暖かな手の感触に瞼は閉じなかった。
「……僕はこのまま溶けていきたいな」
モネは吸い込まれそうなほど蒼い空に、小さく朧げな意識を漠然と重ねていた。
「だめだよ、モネ、わたしを独りぼっちにしないで」
ナナはモネの言葉に何とも言えない寂しさを覚えて、またモネの手を強く握った。
モネはナナのその悲しそうな声に驚いて身体を起こす。
「心配しないで、ナナを一人になんかしないから」
モネはナナの肩を自分の肩に寄せた。
感じる体温で、互いに互いを許しているのが分かる。
「……うん」
二人は寄り添って、遠く向こうから吹く風を感じていた。
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