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真っ白な彼らには初めから何も無い。
在ったのは二つの心だけ。
気が付いた時には二人は二人でいたから。
夢の雫が落ちるより早く、光りが届くより早く、二人は生まれた。
それは消えゆく世界の名残だったのか。
大きな波によどんだナギのはかないカケラなのか。
だから、か弱い二人はお互いに薄い色を重ねて寄り添った。
二つの太陽が沈むと彼らはより身を寄せるのだ。
「海が見たいな」
モネは手を風に翳した。
「海?」
ナナは首を傾げる。
でも、何故か二人は海を知っていた。
見たこともないのに。
「風に少しだけ海が混じっていたから、少し鼻がつんとしたんだ」
「だから海が見たいの?」
モネの胸は段々と好奇心でいっぱいになる。
ナナはそんなモネを初めはただそっと眺めていたが、いつしか自分もあの冷たくて、涼しい海に足を浸してみたいと思った。
「でも、海は遠いかもしれない」
モネは見果てぬ野原を身体中に感じていた。
「頑張ればきっと着くわ」
ナナは目を細めたモネの手を握った。
二人の描く海はきっと深い愛に違い無かった。
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