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「なぁ、お前達。こんな何も無いところにいるより、遥か遠くへ、綺麗な空、色とりどりの鳥達、そんな全てを見てみたくはないかい?」
モネとナナはその穢れた声に驚いて振り向く。
在るはずの無い、無くした穢れなのに。
「誰?」
モネはこわがるナナを背中に隠した。
その声の主は様々な宝石をちりばめた美しい七色のドレスを纏っていた。
「怖がらないでおくれ。ずっといたのだから」
白い指先で唇をなぞりながら二人を見下ろす。
「あんたなんか知らない!」
モネは自分も怖いのを必死にこらえてナナを守りたい一心で叫んだ。
しかし、相手は一歩も引かない。
ナナはモネの肩から少しだけ顔を出しながら言った。
「あなたは悪い人?」
すると、一瞬、世界の全てを映すくらい大きく目を見開いた後、声を上げて大笑いした。
「ハハハ!悪い人か。かわいいね。そんなことないよ。だってわたしは君でもこの男の子でもあるんだからね」
様々な色の入り混じった長い髪を撫でながら言う。
がさがさして割れそうな髪。
光沢なんて無い、人間臭い髪。
そんな穢れが自分達にもあるなんて、二人は信じようとしなかったし信じたくなかった。
モネは怖くなった。
その矛盾に気付いてしまったから。
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