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モネの心の中の何かが小さく火花を散らした。
「……行きたい……」
ナナはどこか不安になりモネの腕を強く掴んだ。
だけどモネの心は確かにモネだけのものだから。
「世界が欲しい」
モネは強く言った。
「モネ?大丈夫?」
ナナの声が小さく震える。
ナナは他に何も要らなかったがモネだけは必要だと心の深いところで感じていたから。
だけど、ナナもモネの全てを束縛なんて出来ないから。
リリスは声を出さずに笑って手を差し出す。
モネは恐れを振り切りその手を取った。
「私の名前は……いや。私はリリス。モネ。お前に力をあげよう」
「力?」
「そう、全てがお前の物になる力さ」
その瞬間モネは強い光りに包まれた。
「ひっ」
モネは突然の出来事に声を出したが、すぐに身体の内側に熱いものを感じた。
「モネ!?」
得体の知れない恐怖感にナナの声はもはや泣いていた。
その穢れは生であるのに。
しかし、死が生を前提に存在するように、生は死を前提とするものだから。
要らないのに、そんなもの。
「さあ、夢の海から漕ぎ出そう。この世界という方舟に乗って」
それは魔法の言葉。彼女はもうリリスじゃなかった。
夢。それだけが魔法の唯一の鍵だから。
リリスが大きく手を広げると、世界の波が一気にモネに流れ込んだ。
しかし、もうモネに恐れなど無かった。
モネはその小さな身体に世界を受け入れた。
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