【序章】降る星に夢見て

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モネはリリスに聞いた。 「海はどこにあるの?」 するとリリスは空を指さした。 終わりなど無いように見える、どこまでも続く青い空。 「あのずっと向こうさ。あの向こうには全てがある。私達の失った全てがね」 「失った?」 ナナは、何故か込み上げてくる悲しみが、どうしようもないない涙になって流れるのをこらえきれずに、弱々しい声を出した。 リリスの眼は空を貫くほど鋭く睨みつけたまま。 「ナナ、泣かないでおくれ。だから今から取り戻すのさ。不条理な運命の鎖を、愚かな私達を、真っ白に帰ってしまった世界を、全部忘れて」 モネはその言葉に、胸の奥の忌ま忌ましい途切れた記憶を思った。 そして決意した。 「ナナ、泣かないで。僕がナナのために、全部取り戻すから。その涙を流したナナの綺麗な心を、僕は絶対消させない」 モネはナナを抱きしめた。 このはかない、消えてしまいそうな身体。 それでも彼女はここにいる。 それをモネは確かに肌で感じて証明している。 だって、ナナはこんなに温かいのに。 その心を消させてなるものか。 モネは空に手をかざす。 すると、空はついにその真っ白な意思に、虹色に裂けてしまった。 「ナナは絶対、守るから」 溢れ出た虹色は全てを覆い尽くし、その虹の方舟はモネの意思によって新たな未来に重なり始める。 そう。 それは全ての源、原初の海の虹なのだから。
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