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画廊に展示された絵の数々をちらっと目にはしたが、どれも駄作揃いに見えた。
何故あんな絵を描く人間と生活を共にしていたんだろう…
「彼氏…?まさかね。」
とにかく不自然な状況に代わりはない。
けれどそんな思いはすぐに断ち切った。
私に過去が無いのは何故なのか?
そんなことはレイオ自身、さして問題にしてはいなかった。
家族がいるのか、どんな素性なのか、生まれ育った場所は?…
何故なのかは分からない。
しかし気にならない以上、その理由を知る必要も無いと思った。
今私がすべき事。
それはここから旅立ち、生きるべき場所を探し出すという事だけ。
レイオにはその場所に辿り着けるのだという、確信に似た何かがあった。
早く絵を描きたい。
他の誰の真似でも無い。私だけの絵を。
きっと辿り着く先は、そんな絵を描くように、私自身の未来を描き出すにふさわしい場所に違いないはずだ。
そんな思いを巡らせ、朝焼けに染まりゆく空を見上げながら、レイオはひたすらに駅のホームを目指していた。
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