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翌日。
時刻は1日24時間単位のうち7時を越えたばかりなのだが、この国には朝と呼ばれる時間はなく、時計が無ければ一日の終わりすら知る術はない。
時計を持たぬ者は己の時間感覚と腹時計に頼るしかない。
無い事尽くしな国。
そんな見捨てられ庭の死臭が鼻を刺すゴミの溜まり場に、明らかに不釣り合いな清楚な白いコートに包まれた少女がぽつんと立っていた。
目の前に転がるゴミゴミゴミゴミ…。
その中に昨日、自分が葬った男が転がっている。
獣染みた紅の瞳をそいつに向けて、感じ取った思考をそのまま口に出す。
「食うか食わないか…それが問題よねー」
馬鹿正直な腹の虫が食を欲する。死体すらも胃袋に詰めようとするのだから、いよいよ重症だ。
だらしなく垂れたよだれを拭うこともなく、死体を見つめる。
異常が正常であるこの庭では、一見異端視されるこのような葛藤でさえも正常なものとして受け入れられるのだから、この世の終わりを見せられているようだ。
この少女、“サラ”もまた、この世の終わりで生きるちっぽけな人間の一人だった。
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