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「今日はどんな用件ですかね?こっちは泥棒退治に精を出してて手一杯なんですが?」
サラは頭の後ろで手を組んでくるくるしながらクライスから離れると、言葉とは裏腹に欠伸を噛み殺していた。
「そこに転がっているゴミではないのか?」
「あー、違います。これはあたしにケンカを売った成れの果てです。途中からはただの鬼ごっこでしたけど」
やれやれと言った様子で溜め息を吐くサラに対して、クライスは成れの果てに一切興味を示すことなく、何事もなかったように話を戻す。
「ならば、こちらの仕事を優先させろ」
「はー、まぁ、いいですけど。…珍しいですね、横入りの依頼なんて」
「クライアントが特別でな。では、行くぞ」
詳しい話は無し。サラの意思確認は無し。時間は無し。容赦は無し。感情は無し。何より愛想無し…。
何もかもが欠落したクライスにまともな話し合いや交渉…ましてや拒否権などは一切通用しないのだから、サラは黙ってついていくしか選択肢は無い。
「…あたしが弟子だから、人一倍容赦ないよなー」
サラが世界で唯一頭の上がらない男に聴こえないよう悪態を吐くと、それからは余計な詮索はせずに黙ってついていく。
次は誰を殺すのかなー、と胸を踊らせながら軽い足取りで。
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